第16回講演会
プログラム3
『腸もれが がんをつくる』
東京医科歯科大学名誉教授
藤田 紘一郎先生
1.寄生虫と腸内細菌の研究に50年
皆さん、こんにちは。
ご紹介いただきました藤田でございます。
私の研究は疫学です。
疫学というのは、どういう人ががんになっているかとか、どういう人がアレルギーになっているかという研究なんですね。
こんな変な研究を50年もやっております。
退官して15年もたっていますけれども、いまだに小さな研究室を持って、こつこつやっております。
今日は、「腸もれが がんをつくる」という話をさせていただきますけれども、私はノーベル賞をもらわれた山中教授と経歴はほとんど同じです。
山中教授は、柔道2段でマラソン選手。
私も柔道2段でマラソンの選手、2人とも整形外科の医者になりました。
同じです。
もう一つ同じところがあります。
2人とも手術が大変下手でした。
山中教授は30分の手術が3時間かかって「邪魔なか」と言われたそうです。
二人とも手術が下手で、整形外科の医者をやめて研究の道に進んでいるんです。
でも、それからが違っちゃいました。
山中教授は細胞培養、iPS細胞を研究されてノーベル賞をもらう。
私は回虫を研究しちゃったもんですから、コメディアンみたいになったわけですけれども、コメディアンの研究生活を50年もやっていると、いろいろおもしろいデータが出てきました。
なぜ整形外科の医者がこんな腸内細菌とか寄生虫を研究するようになったか、よく考えてみたら、トキソプラズマという原虫にかかったことが関係しているのかもしれません。
私は、大学院は東大の伝染病研究研所(現在の医科学研究所)で研究しました。
トキソプラズマを使って実験していました。
トキソプラズマを実験で間違って手に何度も打ちました。
ですから、私の体の中にはトキソプラズマの原虫がいっぱい住んでいると思います。
でも、免疫が強ければ、トキソプラズマ原虫は膜に囲まれて悪さをしないということが定説でした。
ですから、私は何度も失敗しても平気だったんです。
しかし、トキソプラズマが問題になるのは、ご婦人が妊娠して、初めてトキソプラズマに感染したときに胎児に影響があります。
それから、エイズなんかにかかって免疫が落ちた時には、静かに袋に入っていたトキソプラズマ原虫が異常にふえて、トキソプラズマ性脳炎で死ぬ。
でも、免疫がちゃんとしていれば袋に入っていてじっとしているから無害だということを言われていたんです。
しかし、最近の研究では、トキソプラズマにかかった人は、かかっていない人に比べて交通事故が2倍多い、それから非常に人の言うことを聞かなくて、大胆なことをやっているということがわかってきました。
私は、東大の医学部にいるときは、本当に人の顔色ばかり気にする人間だったんですけれども、いつの間にか教授が何と言おうと好きなことをやるということで、ここまで来たわけです。
これから、がんをつくったり、アレルギーを起こしたりするのは、腸内細菌が原因だというお話をしようと思います。
私は、腸内フローラ、フローラというのはお花畑ですがお花畑をきれいに咲かせると、がん、糖尿病、肥満、老化、何でも効く、これを私ずっと前から言っていたんですけれども、私の人柄のせいか誰も信じてもらえなかったんです。
でも、NHKスペシャルで腸内フローラの話題を取り上げたら、一挙に私のところへ取材が来たわけです。
腸内環境を整えれば、がん、アトピー、鬱、脳梗塞、自閉症、認知症、多くの病気が良い方向に向かう。
なぜかというお話ししようと思うんですね。
2.寄生虫からアレルギーを抑える物質を発見
まず、アレルギーの話からしようと思います。
昔なかったアレルギーがなぜ増えてきたか。
皆さん方にも花粉症になっている方が多いと思いますけれども、スギ花粉症の日本第1例は1963年、日光市の患者さんです。
日光には昔からスギ花粉が飛んでいましたが、花粉症になったのが1963年が日本第1例。
今は日本人の3人に1人ぐらいスギ花粉症になっています。
当時日本人は、アレルギーにならない国民だと言われていました。
アメリカでは、ブタクサ花粉症があったんですけれども、日本人は誰もかかってない。
ところが今は世界で一番アレルギーになりやすい民族となったわけです。
なぜかというお話からしようと思うんですね。
私は、整形外科の医者をやっていましたけれども、ばい菌学の研究に変わりました。
高橋先生みたいにいい研究ができないものですから、どこの研究所も雇ってくれなかったんです。
私は最初に給料をいただいたのは三井物産の木材部、インドネシアのカリマンタン島に6カ月おりました。
そこで子供たちを見ていると、アトピー、ぜんそく、花粉症が全くなかったわけです。
(図1)
うんちが流れているところで遊んでいるんですね。
彼らに言いましたよ。
君たちは何と野蛮だ、うんちが流れているところでよく遊ぶよ、だから君たちは病気になるんだと言ったんですけれども、私は同じところに50年通っています。
彼はおじいちゃんになっています。
彼女はおばあちゃんになっている。
君たちは、こんな汚いところで遊ぶから病気になるんだと言ったんですけれども、日本の子供たちよりずっと元気に育ちました。
見てください。
彼の肌、黒光りですよ。
触ると、とっても気持ちいい。
特に若い女の子の肌、一度触ると、やみつきになります。
アトピー、ぜんそく、花粉症が全くないわけです。
なぜうんちが流れている川で遊んでいる子供たちがアトピー、ぜんそく、花粉症がないかというのが私の生涯の研究テーマになりました。
でも、なかなかここには研究員が行ってくれないんですよ。
どういうところかといいますと、トイレはこの川岸に掘っ建て小屋が建っていまして、そこでトイレをするんですが、トイレしようとすると魚が寄ってきて、飛び上がってお尻をなめるようなところですから、誰も研究員が行ってくれない。
でも、一番だましやすいのは柔道部員ですよ。
この写真は、私が順天堂大学にいるときの写真です。
柔道部の部長をしておりまして、衛生学の助教授をしていました。
柔道部員をだまして連れていったんですね。
このスライドを使って、いろんな大学でも講義しています。
高橋先生の教室にはもう10年以上通って講義させてもらったんですけれども、この間、慶應大学の医学部でこのスライドを使って講義を始めたんです。
柔道部員は単純で、彼もだまして連れてきたんだよと言いましたら、一番前に座っている学生が手を挙げて、彼は僕のお父ちゃんですと言っていました。
余り人の悪口は言えないなと思ったわけです。
柔道部員をだまして連れていって調査すると、うんちが流れているところで遊んでいましたから、現地の人は全員が回虫という寄生虫にかかっていました。
ところが血圧を測ったら正常者が日本人より多い、コレステロール、正常値が日本人より多い。
皆さん方は私よりはるかに若い方ですから、回虫なんか見たことないと思いますね。
そういう方にとって、回虫にほぼ全員かかっているというと、とても野蛮な民族と思われるかもわかりませんけれども、私は思わないです。
なぜかというと、私が小学生のとき、ほぼ全員回虫にかかっていました。
私の出身は三重県です。
三重県多気郡明星村大字上野、明星村立明星小学校の出身です。
全員が回虫にかかっていました。
私はNHKの「ようこそ先輩」に出まして、明星小学校の6年生を教えに行ったんですね。
そのとき初めて明星小学校の同窓会を開催してくれました。
でも、久しぶりに会っても50年前の明星村の思い出話を誰もしないのです。
全員が話したのが回虫の駆虫デーの話でした。
カイニンソウという駆虫薬を飲んだあと、虫が出て来たのですけれども、おまえのより長かったとか、3匹多かったとか、そういう話でした。
そのころ私たちは、スギ鉄砲で遊びました。
杉の実をとってぱちんと打つやつ。
その杉鉄砲をやっていても、誰も花粉症はなかったんです。
私は、三重県多気郡明星村の経験と、インドネシアのカリマンタン島の経験から、回虫がアレルギーを抑えるだろうと思ったんです。
30年前、東京の野犬を調べると犬のフィラリアを大抵持っていました。
私はその当時順天堂大学にいました。
順天堂大学の心臓外科の先生方は、野犬の心臓を使って実験していました。
だから、この虫は要らないはずですね。
私は、この虫をもらって、ここからアレルギーを抑える物質を取り出そうとしたんです。
でも、大変でした。
順天堂大学の心臓外科の先生方は、大変けちでした。
この虫は要らないのに、ただでくれないんですよ。
だから、お菓子を買ってきて、ちらちらと見せた。
そうしたら、やっとくれたんです。
お菓子を見せて、この虫をもらって、うれしそうに帰りますと、私のことをおかしなやつだと言う。
高橋先生もおっしゃいましたね。
がんを最初にやっつけるのはNK細胞。
笑うとNK細胞が出るんですよ。
おもしろくなくても、無理して笑う顔をするとNK細胞が出るんです。
ですから、高橋先生と全く逆の講演をして、皆さん方に話題をとろうと思ってやっていますから、おもしろくなくても笑ってほしいと思うんです。
ここからアレルギーを抑える物質を見つけました。
それは大変だったんですけれども、それは何で大変かというと、言っているともう明日になっちゃいますからやめますけれども、ここからアレルギーを抑える物質、分子量約2万のたんぱく質を見つけました。
寄生虫の分泌・排泄管、つまり寄生虫のうんちとかおしっこの中に分子量2万のたんぱく質があって、それが体に入るとアレルギーが抑えられるということがわかったんです。
3.寄生虫の分泌物が保つ免疫バランス
なぜアレルギーを抑えているかです。
免疫反応は、ご存じのようにマクロファージとヘルパ-T細胞2とBリンパ球、3つでなされています。
花粉が入ってくると、マクロファージという食細胞が出て花粉を取り込んでしまいます。
その情報がMHCクラスⅡとTCRでB細胞に伝わります。
もう一つがCD40を通って入ってきた花粉の情報がB細胞に伝わって、B細胞は花粉に対するIgE抗体をつくります。
次に花粉が飛んでくると花粉に対するIgE抗体と花粉とが反応するから花粉症になるわけです。
(図2)
だから、花粉症は春先、花粉が飛んできたときに起こるわけです。
でも、私は起こりません。
なぜかというと、私のおなかの中にはサナダムシのキヨミちゃんがいます。
今、12メートルぐらいになっている。
キヨミちゃんが私のおなかの中にうんち、おしっこをばらまく。
そのキヨミちゃんのうんちの中の分子量約2万のたんぱく質(DiAg)が私のCD40の中にぱちんと入っちゃう。
そうすると、私は花粉を吸ってもその情報がブロックされて、私のB細胞は花粉に対するIgEは産生しない。
だから花粉症にならないわけです。
おなかの中に回虫とかサナダムシを飼っていると、アレルギーにならないということが分子レベルではっきりしたわけです。
私はこれを『サイエンス』という最高の雑誌に載せました。
ですから、私は、アメリカとかヨーロッパで有名になりました。
BBC放送もニューヨークタイムスも取材に来たんです。
ところが、日本の医学会で発表したら全く無視されました。
虫を研究していましたから、無視されても仕方がなかったかもしれませんが・・・。
ありがとうございます。
拍手が高橋先生より多いので、ほっとしております。
わかってもらえませんから、この『笑うカイチュウ』という本を書きました。
ここから私がもう学問的に非常に軽蔑される人間になったわけですけれども。
アレルギーというのは、この肥満細胞の中にあるヒスタミンとかセロトニンが出るとアレルギー反応を起こします。
この細胞は、どこにでもあります。
鼻の粘膜の肥満細胞が破れてヒスタミン、セロトニンが出ると、くしゃみ、鼻水、鼻詰まり、花粉症になります。
皮下の肥満細胞が破れてヒスタミン、セロトニンが出ると、皮膚が赤くなって、かゆくなって、アトピーになる。
気管支の肥満細胞が破れてヒスタミン、セロトニンが出ると、気管支が収縮して、ぜんそくになる。
だからアレルギー反応というのは肥満細胞が破れた状態です。
一旦アトピーになると、皮下の肥満細胞が破れ続けます。
それを治す薬は、出てきたヒスタミンを中和する抗ヒスタミン剤なんです。
だからアトピーになるとなかなか治らない。
ところが、私が寄生虫から抽出した約2万の物質を注射すると、肥満細胞を破れなくするというのがわかりました。
アトピー、ぜんそく、一発で治す薬なんです。
こんな薬は世界でありませんから、私は薬をつくろうと思いました。
これは2万の物質の遺伝子です。
遺伝子組み換えと言って、大腸菌の中にこれを入れると、大腸菌はこれと同じものをつくります。
寄生虫を洗って、干して、はさみで切ってなんてしなくて済むわけですね。
ですから、私は、アトピーとか、ぜんそくを一発で治す薬を手に入れたわけです。
(図3)
そこで実験しました。
ネズミをアトピーにしました。
このネズミに私が抽出した2万の物質を1回注射しました。
見てください、こんなにきれいになったんです。
これは、本当は皆さん方、おおっと驚いてもらわなくちゃいけないんですよ。
一発で消えちゃうんです。
私はこれで、アレルギーを治す薬を手に入れましたから大金持ちになれると思ったんですけれども、この薬、だめでした。
免疫のバランスを失って、がんになりやすい体質になるというのがわかったんです。
免疫は、Th1とTh2がありまして、こちら(Th1)はがんを抑える系、一方Th2はアレルギーと関係する系、そこへ私が遺伝子組み換えでつくった薬を打ちますと、Th2は大きくなるんですけれども、Th1が小さくなって、出てくるがん細胞を見逃した。
(図4)これでお気づきになったと思いますが、私たちは寄生虫からアレルギーを抑える物質を見つけたんです。
それは分子量2万のたんぱく質、ところが、実際の寄生虫感染ではTh2と同様にTh1を刺激する物質も出している。
私たちは、アレルギーを抑える物質だけを取り出したから免疫のバランスを失ったけれども、生きているサナダムシは両方抑えている。
バランスをとって刺激しているというのがわかったわけです。
(図5)
そうしますと、サナダムシのキヨミちゃんというのは、人のおなかの中でしか子供を産めないんですよ。
犬の中に入ったって、子供を産めないんです。
サナダムシのキヨミちゃんはヒトの寄生虫です。
ヒトの中でしか卵を産めないです。
だから、ヒトががんになっても困る、アトピーになっても困るから、いろんな物質を出している。
そういうものを全部追い出したから、アレルギーになったという考え方ですね。
じゃ、サナダムシはみんないいことをしているかというと、とんでもないですよ。
北海道ではやっているエキノコックスというのは怖いサナダムシです。
エキノコックスはキタキツネのサナダムシです。
キタキツネの中で子供を産むんです。
ヒトに入ったら子供を産めないから、ヒトには非常に悪い影響が出る。
ヒトにとって有益な寄生虫と害のある寄生虫があるんです。
4.腸内細菌がさまざまな病気を抑えている
ところが、私たちのつくった文明社会は、私たちを守っている菌を追い出している。
皮膚には皮膚常在菌がいるから、酸性の膜をつくってアレルゲンや悪いばい菌も入らないようにしている。
また、皮膚内部の水分が抜けないようにしている。
それをごしごし洗いましょうと言います。
インフルエンザの時期、手を洗いましょう、せっけんで洗って培地の上に手を置いて、これだけばい菌がいますよ、手の洗い方が少ないですよと言っているけれども、そうじゃないです。
守っている菌がいるということですよ。
守っている菌まで追い出しているんです。
女性の膣がきれいなのは、デーデルライン乳酸菌という菌がいるからです。
これは膣のグリコーゲンを食べて、乳酸をつくって、膣を強力に酸性にしている。
雑菌が入ったら殺すようになっている。
それをきれいにしたほうがいいと、ビデで洗っている。
守ってもいるデーデルライン乳酸菌が流れてしまいます。
流れると膣は中性になる。
中性になると雑菌がわっとふえて、膣炎が起こって、流産まで起こりやすくなるわけです。
流産とか早産を繰り返している女の方を対象に、元国立医療センターの荻野先生と共同研究しました。
全員ビデで膣を洗い過ぎ、守っている菌を洗ってしまっていました。
腸内細菌は、皆さん方のおなかの中に100兆個います。
重さとして1.5キロですよ。
ですから皆さん方の本当の体重は、体重引く1.5キロなんです。
その1.5キロの腸内細菌は何しているかというと、悪いばい菌が入ったら追い出しています。
それから、ビタミンB群なんかは腸内細菌しかつくれませんよ。
幸せ物質のドーパミン、セロトニンの前駆体をつくっているのは腸内細菌です。
免疫の70%をつくっているのは腸内細菌。
腸内細菌がいないと我々は生きられないんです。
でも、現代人の便は戦前の3分の1量まで減っています。
腸内細菌は、私の腸内細菌と高橋教授の腸内細菌と、それから丸山先生の腸内細菌、みんな違うんですよ。
私の腸内細菌は私のおなかの中でしか棲めないんです。
乳酸菌もみんな違いますよ。
私の乳酸菌はキムチの乳酸菌と京つけものの乳酸菌だと思います。
私たちの腸内細菌の種類は、生まれて1年半でほとんど決まっちゃいます。
私は、韓国の女中さんに育てられました。
だからキムチの乳酸菌が入っています。
おふくろは京都の人間ですから、京つけものの乳酸菌が入っています。
おやじは1回も私のところに来ませんでしたから、おやじの乳酸菌は入っていません。
私の乳酸菌と皆さん方の乳酸菌は全部違うんです。
大相撲の白鵬の乳酸菌は、モンゴルの人ですから、ヨーグルトとかチーズなんかの動物性の乳酸菌、みんな違うんですよ。
みんな違うんで、私の腸内細菌は私の中だけでしか増えることが出来ないんです。
だから私ががんになっても困る、アトピーになっても困る、ぜんそくになっても困る、いろんな病気になっても困る。
だから腸内細菌を増やせば、いろんな病気も抑えられるということなんですね。
5.腸内環境の整え方
腸内環境の整え方は、簡単です。
腸内細菌を増やすことです。
それから活性酸素、これが非常に腸内細菌を殺しますから、これを消すことです。
ストレスを取り除く。
おなかを温める。
腸はミトコンドリアが一番多いところです。
ミトコンドリアを上手に動かすためには、体温を高めないといけないのです。
これらを実行すれば腸内環境がよくなってくるわけです。
腸内細菌を増やすこと、これも簡単です。
餌である野菜、豆類、穀類、手づくりの食品を摂る。
食品添加物の含まれていない手づくりでないといけませんよ。
それから発酵食品をとる。
発酵食品、ヨーグルトとか漬物の中には善玉菌もいますけれども、乳酸菌などもいます。
しかし納豆にはほとんど善玉菌はいません。
調べてみると、ほとんどが日和見菌です。
日和見菌って、ここら辺の菌です。
ここら辺の菌が実は腸内細菌の大部分を占めているということがわかったわけです。
ですから、添加物の含まれている食品はやめる、こういうことに気をつければ、腸内細菌をふやすことができるわけです。
(図6)
もう皆さんよく知っておられると思いますけれども、がん予防の可能性のある食品を挙げると、ガーリック、キャベツ、カンゾウ、大豆、みんな植物性です。
動物性のものはありません。
なぜかというと、植物性のものが腸内細菌の餌になって、Th1を大きくして、出てくるがん細胞をやっつけるんですけれども、それじゃなぜガーリックが1番で2番がキャベツかというと、活性酸素を抑える順位がガーリック1番、キャベツ2番なんですね。
キャベツというのは、野菜の中で免疫を高める野菜であると同時に、活性酸素を抑える野菜なんです。
(図7)
2週間前、私は「世界一受けたい授業」に出ました。
酢キャベツをタレント4人に食べてもらったんです。
毎食100グラムを2週間にわたって食べてもらいました。
本当は、一緒に精製した糖質の制限をしたほうがいいんですけれども、スポンサーで糖質を売っている会社があったので、それはできなかったんですけれども、条件としてスナック菓子だけはやめてくれと、あとは好きなだけ飲んで、食べてもいい。
そういう条件で2週間、毎食100グラムの酢キャベツをやりましたら、驚いたことに4人とも、やせ菌というのがかなり増えており、デブ菌が減ったんですよ。
皆さん方、太ったりやせたりするのは、カロリーだと思っておられるかもわかりませんけれども、カロリーじゃないですよ。
腸内細菌なんですよ。
腸内細菌のデブ菌というのをふやしたら太ってきちゃうんです。
ちょっと食べても太ってくるんです。
詳しくは私の書いた本がありますので、読んでいただきたいと思うんですけれども。
キャベツなんかすごくいいんですよね。
私は、80歳でエベレストに登られた三浦雄一郎さん(今もう85歳ですけれども)、それから広島大の学長をされた原田先生(87歳)とご一緒に講演会をやっています。
原田先生は、長いこと広島大の学長をなさっておられましたけれども、学問的には大したことないんですよ。
大したことあるのは、世界一長寿のオペラ歌手なのです。
87歳ですよ。
「リゴレット」というオペラを2時間イタリア語で歌うんですよ。
イタリア語が正しいかどうかは誰も知りませんけれども、とにかく元気。
その原田先生が3年前太ってきちゃって、声が出なくなった。
藤田君どうしたらいいだろうかと、相談を受けましたので、私は食前キャベツというのを推薦しました。
食事の前にキャベツを千切りにして、それを食べてください。
そうしたら1年間で10キロ減りました。
声もちゃんと出てきた。
キャベツというのは、免疫を高める物質であると同時に、活性酸素を抑える物質なんです。
こういうものをとらなくてはいけないんですね。
ですから、アメリカは大統領が、ファイブ・ア・デイ運動、1日5種類の色のついた野菜、果物をとりましょうと言ったことは、すごく影響があったんですよ。
アメリカでは、毎年1人当たりの野菜消費量が、年々こんなにふえてくる。
一方、日本はというと、見てください、毎年のように減っていますよ。
アメリカは、世界に先駆けて全がんの発生率が低下してきました。
がんの研究は大事ですよ。
でも、1日5種類の色のついた野菜、果物を食べましょうと言うだけで、これだけがんの発生が低下してきた。
日本は毎年のように野菜消費量が減っていますね。
最近ちょっと増えてきたのは、いろいろな方の啓蒙活動がふえたからだろうと思うんですけれど、まだ全がんを抑えるところには行っていません。
6.活性酸素を抑える食物
今、私たちがつくった文明社会が活性酸素を大量に生んでいます。
ICカード、電子レンジ、抗菌グッズ、添加物の入った食品。
活性酸素は免疫を低下させます。
細胞を老化させます。
寿命を短くします。
細胞をがん化します。
活性酸素が原因の病気は200種類ぐらいあります。
脳梗塞、心筋梗塞、糖尿病、高血圧、アルツハイマー、みんな活性酸素が一因です。
だから、この活性酸素だらけの世の中に住んでおられますから、皆さん方は活性酸素を抑えるものをとらなくちゃいけない。
1つは、植物です。
植物の中には、活性酸素を抑えるものがあります。
それから酵母とかかびなどの発酵食品、そして腸内細菌をふやすこと。
腸内細菌はおなかの中で水素をつくります。
水素は、活性酸素を消すすばらしい物質ですね。
皆さん方は水素水というのはご存じだと思いますね。
飲料水の中に水素を充塡したものです。
日本医大の太田教授が研究されております。
水素水を飲ませたマウスでは、脳に蓄積した活性酸素が消えて認知症がよくなったというデータを出されております。
確かに水素水は、アルツハイマーなどの認知症を治す有力な物質ですけれども、水素水の水素は充塡したら飛んじゃうんですよ。
だから、人が飲んで、口をあけていると飛んじゃうんです。
だから水素水は、ただの水という結果になるわけですが、腸内細菌をふやせば腸の中で水素をつくっているので、それが活性酸素を消してくれます。
植物の中にだけ抗酸化物質があります。
植物は、炭酸ガスを吸って酸素を出します。
酸素は大事なものですけれども、これが活性酸素に変わっちゃうと細胞を傷つけます。
ですから、植物は、自分の身を守るために抗酸化物質、フィトケミカルを持っている。
(図8)
何かというと、色と臭いです。
ポリフェノールというのは、ブドウとか、プルーンなどに含まれている鮮やかな緑とか、赤色、これが活性酸素を消す作用があります。
皆さん方はフレンチパラドックスって知っておられますね。
フランス人は、ドイツ人とかイギリス人に比べて、脳梗塞、心筋梗塞になっていない。
同じように肉を食べて、同じような食生活しているのにならない。
なぜか。
フランス人は好んで、赤ブドウ酒を飲んでいます。
このブドウの色が活性酸素を消しているわけです。
私たちは、コレステロールを善玉と悪玉と分けていますけれども、悪玉コレステロールは活性酸素とくっついて初めて悪玉として働きます。
活性酸素を消せば悪玉があっても大丈夫なわけですね。
そのほか、海藻とか、根野菜における緑黄色、ニンニクとかネギの香りとか、大根、からし菜の辛み、ハーブ類、柑橘類の苦味、きのこ類、酵母類。
皆さん方は、こういった活性酸素を抑えるものを毎日とらなくちゃいけない。
だから、アメリア大統領が1日5種類の色のついた野菜、果物をとりましょうというキャンペーンで、がんが抑えられたということがわかったわけです。
広島とか長崎で原爆を受けた人の調査で、同じように原爆を受けても後遺症などが軽かった人を調べたら、みんなおみそ汁を何杯も飲んでいる人達でした。
おみそ汁の何が活性酸素を抑えていたのか調べたら酵母だったんです。
ですから、熟成したみそを使ったおみそ汁を飲んでいる人が、同じように放射能を受けても症状が軽かったことがわかりました。
放射能の症状は、細胞に当たって活性酸素を出して細胞を壊死させるんです。
だから、抗酸化物質を食べていると、それを抑えられたということになるわけです。
7.解糖エンジンとミトコンドリアエンジン
あと、おなかを温めるということは必要です。
私たちは、2種類のエンジン、ハイブリッドのエンジンで動いています。
解糖エンジンとミトコンドリアエンジンです。
解糖エンジンは、古い古いエンジンでして、地球上に酸素がないときに、ばい菌さんたちが使っていた古いエンジンです。
それが残っているのは、子づくりとか、暴力とか、原始的なエネルギーです。
ミトコンドリアエンジンは、植物とか、動物になってできた新しいエンジンで、これは長生きのエンジンです。
解糖エンジンは温度が低いところで回ります。
ミトコンドリアエンジンは温度が高いところで回ります。
解糖エンジンは子づくりのエンジンですから、子供をつくれるときは解糖エンジンをちょっと回さないといけませんね。
だから、例えば睾丸はおなかの中にありますと精子をつくれません。
体内では37度だから、睾丸がおなかの中にあるとわかったら、小児科の先生は睾丸を外へ出すんです、冷やすために。
でも、単に外へ出しただけでは冷え方が足らないから、ラジエターみたいな袋に入っているわけです。
男の赤ちゃんのおちんちんが変な袋に入っているのはわけがあるわけです。
一方、ミトコンドリアが一番体の中に多いのは腸です。
腸を活発化するためには、おなかを温めなくちゃいけないんですね。
(図9)
長生きの条件は、動物実験では得られないんですね。
動物は、例えば、チンパンジーは生理が終わったらすぐ死にます。
サケも産卵したらすぐ死ぬんです。
でも、ヒトだけは生理が終わっても長く生きているんです。
それはヒトの赤ちゃんだけが生まれたらすぐ立てないということと関係しているらしいです。
馬でも、羊でも、生まれたらすぐ立ち上がりますけれども、ヒトの赤ちゃんは1年間ぐらい歩けません。
動物とヒトとはエネルギーの使い方が違うんですよ。
だから長生きの条件は、動物実験では得られません。
カロリー制限したネズミと、食べ放題のネズミを比べて、どちらが長生きしているか調べたら、カロリー制限したネズミのほうが長く生きるんです。
だったらヒトもカロリー制限したほうが長生きする。
とんでもないですよ。
食べ過ぎぐらい食べるのはいけないですが、特に肉は週2回ぐらい食べる人が元気ですね。
どういう人が長生きしているかを調べました。
年をとってくると、男性ホルモンも女性ホルモンも自然に出にくくなります。
それを補うのは食べ物です。
ホルモンは、コレステロールから作られているんです。
だからコレステロールをとらなくちゃいけない。
年をとってくると脳細胞が弱ってくる。
脳細胞の膜はコレステロールでできています。
だから年をとったらコレステロールが必要なんですよ。
動物実験ではそんな結果は出ません。
どういう人が長生きしているか調べると、100歳以上長生きしている人には、菜食主義者は一人もいません。
みんな週2回ぐらいステーキ食べております。
動物実験と違うということを認識していただきたいと思います。
ですから、『50歳からは炭水化物はやめなさい』、これは売れたんですよ。
ところが、『50歳から肉を食べ始めなさい』、これは全然売れておりません。
活性酸素だらけの世の中にいますから、活性酸素を消す生活習慣が大事なんです。
よくかむことです。
よくかむと、唾液中のカタラーゼとかペルオキシダーゼが活性酸素のもとを消すんです。
よくかんで気持ちの悪い食品というのは食べないほうがいいですよ。
ゆっくり呼吸する、体を温める。
過激な運動をしない、これは、ミトコンドリアエンジン、つまり長生きのエンジンを動かすんです。
がん細胞は、全てではありませんけれども、古い細胞ですから解糖エンジンで動いているんですよ。
だから、がんになりたかったら、糖をいっぱい食べて、おなかを冷やして、ハーハー、ハーハー息をすれば、がんになりやすいですよ。
がんになりたくなかったら、ゆっくり呼吸し、体を温める、過激な運動をしない。
私はマラソンの選手だったんですけれども、今はフルマラソンはしません。
もう60過ぎから、フルマラソンはしません。
若いときは私たちの体の中には活性酸素を抑える酵素を持っているんですけれども、年をとってくると活性酸素を抑える酵素が少なくなっています。
だから、年をとったらフルマラソンのような過激な運動はしてはいけません。
そして、なるべく活性酸素を浴びない自然の中で生活するということが大事なわけです。
8.腸もれ―腸内細菌が血液中に洩れて病気の原因に
『脳はバカ、腸はかしこい』という本を書きました。
これも売れました。
生物がこの地球上に生まれて、約40億年たっています。
でも、35億年までは腸だけの生き物なんですよ。
脳ができたのは、たった5億年前です。
だから腸を意識して、脳の言うことを聞かないということが大事なんですよ。
ポテトチップスを1回食べたらとまらないというのは、脳がばかなんですよ。
腸の言うことを聞かないといけないですね。
もっとおもしろい話があったんですけれども、もう時間がないから言いませんけれども、なぜこんなに医療が発達しているのに食物アレルギー、自己免疫疾患、糖尿病、動脈硬化、がんなどいろんな病気が起こるのでしょうか。
それはリーキー・ガット、「腸もれ」も関係していると思います。
(図10)
私は、以前より赤ちゃんは生まれたらそこら辺のものをなめさせてください、お母さんのおっぱいを消毒したりしてはだめです。 おじいちゃんが寄ってきたら、ばい菌さん寄らないでとやっているけれども、そうじゃなくて、ばい菌の塊みたいなおじいちゃんに来てもらって、ちゅうちゅうしてくださいと言っていたんです。 だから、医学部でも変なやつだと思われていました。 でも、今やっと衛生仮説というのは認められてきました。 アレルギーにならないのは、どういう子供か。 牧畜業をやっている家庭ではアレルギーになる人はいません。 子だくさんの家庭でもいません。 それから、早くから保育園に預けている子供もなりません。 一人っ子で大事に大事に、おっぱいも消毒して、哺乳瓶も消毒して、おじいちゃんが寄ってくると、ばい菌さん寄らないでと言っている人がアレルギーになっている。 それは、そこら辺の菌をなめないといけないです。 赤ちゃんがいろんなものをなめるというのは、本能的に腸内細菌を増やしているのです。 腸内細菌の種類は1年半で大体決まっちゃうから、1年半でどれだけハイハイしていろんなものをなめるかということが大事なわけですよ。 (図11)
でも、日本の医学界で言うと、またパッシングされますから、余り言わないでおこうと思っていたんですけれども、アメリカでは「eat dirt 土を食べろ」という、こんな厚い本が出ていますよ。
土を食べろ。
それほど、きれい社会というのはいろんなアレルギーやがんを作っているということがわかってきたわけです。
最近、子供に食物アレルギーが多くなったのはなぜか、土壌菌の摂取が少なくなる。
土壌菌とは、ここら辺の菌です。
そして、離乳食を始めて、添加物が入ったような食品をとって、もれる腸になったということですね。
皆さん方は、プロテニスプレーヤーのジョコビッチ選手を知っておられますね。
ジョコビッチ選手は一時セリアック病になっていまして、非常に精神的にも不安定で、食物アレルギーが多くなった。
それは、小麦のたんぱくのグルテンが原因でした。
彼は、グルテンフリーの食品をとって治すようにしているんですね。
グルテンというのは小麦の中にあるたんぱく質です。
糖尿病になるとリーキー・ガットになりやすい、もれる腸になりやすい。
これはヤクルトと順天堂大学の先生方が研究されています。
正常人で調べると、生きた腸内細菌が血液中に入っている割合が50人中2人。
糖尿病の方では、もっと多くて50人中12人になる。
生きた腸内細菌が血液中に見えるということは、腸に穴があいているからです。
動脈硬化も、腸に穴があいていることが原因だということが明らかになってきました。
動脈硬化はリーキー・ガットから生きた腸内細菌の毒素が入って、血管に慢性炎症が起き、血管内にマクロファージの死骸ができて、これが動脈硬化になる。
自閉症の原因も腸だということがわかってきました。
4EESという毒素が腸から侵入した結果、自閉症が起こった。
整腸剤を与えると治ってしまう。
その腸のバリアを強化しているのが短鎖脂肪酸です。
短鎖脂肪酸というのは、善玉腸内細菌が食物繊維食べると、できるわけです。
短鎖脂肪酸というのは、酪酸とか酢酸とか、そういった酸ですね。
ですから、私は酢タマネギとか、酢キャベツを食べて、その短鎖脂肪酸を外からでも与えようということが有効と思っています。
9.病気の遺伝子があっても腸が良ければ長生きできる
35億年まで、腸だけで生物は生きてきたんですよ。
だから、脳死、脳が死んでもヒトは生きていますが、腸が死ぬと全部、調子悪くなるんですね。
O-157が入っても腸内細菌は追い出します。
食物繊維を消化できるのは腸内細菌しかいません。
ビタミンBとかKとか、大事なビタミンを合成するのは腸内細菌です。
それから幸せ物質のドーパミン、セロトニンの前駆体も腸内細菌がつくっている。
セロトニンが脳に少なくなるとうつ病になります。
うつ病や眠れないとかいうのも、みんな腸が悪いからですね。
腸内細菌と腸細胞で免疫の70%をつくる。
腸さえよくすれば、みんな元気で生きていくということです。
セロトニンが脳に少なくなるとうつ病になります。
メラトニンがないと眠れなくなります。
これは腸の中でしかできません。
セロトニンのもとは、トリプトファンというアミノ酸ですけれども、葉酸とか、ナイアシンとか、ビタミンB6がないとつくれないんですよ。
ですから、腸の中に腸内細菌がいないとセロトニンもドーパミンもギャバもできない。
だから腸を大事にすると、心も体も元気になるということをおわかりいただいたと思います。
今、食物繊維の摂取量が戦前の3分の1です。
腸内細菌が減りますと、免疫が落ちてきます。
そして花粉症とか、ぜんそくが1963年から急激に増えてきました。
セロトニンが脳に行きませんから、うつ病が2000年から増えてきた。
うつ病とか、アレルギーが増えてきたのは腸内細菌が減ったこと関係していると思うんです。
腸内細菌をふやすことは難しいことではありません。
免疫の70%が腸内細菌がつくりますから、野菜類を多くとるということが大切です。
(図12)
今、大変なことになっております。
125歳まで元気で生きると私は言っているんですけれども、皆さん方は、がん家系だから早く死ぬとか、脳梗塞の家系だから早く死ぬと思っておられるかもわかりませんけれども、腸内フローラをきちんと整えると長生きできます。
『遺伝子も腸の言いなり』という本を書いたんですが、遺伝子で病気になるかどうかが決まるんじゃないですよ。
腸がよければエピジェネティクスといって、遺伝子が変わるんです。
でも、アメリカでもほとんどの人が遺伝子で病気になるかどうか決まると思っています。
アメリカの有名な女優さんは、乳がんの遺伝子を持っていたんです。
持っているだけで、あの立派なおっぱいを切っちゃったんです。
もったいないですよ。
乳がんの遺伝子を持っていても、腸をよくすれば全部いいほうに変わっていくんです。
このグラフを見てください。
赤いほうは100歳以上の元気な人のがんの遺伝子、心臓病、糖尿病の遺伝子。
青いほうが50歳で死んだ人の病気の遺伝子、同じでしょう。
元気な百寿者は遺伝ではなく、生活習慣で決まっているのです。
百寿者のリスク遺伝子の数は一般人と同じです。
だから、がんの遺伝子を持っていても、糖尿病の遺伝子を持っていても、腸内細菌をふやして、生活習慣をよくすればがんを抑えられるということです。
(図13)
遺伝子の末端にテロメアというのがあります。
いわゆる寿命の回数券です。
生まれたときに皆さん方は1万塩基対持っています。
それが5,000塩基まで減りますと死んでしまいます。
ですから、私も皆さん方も、必ず寿命が来ます。
でも、125まで元気で生きられるんです。
今の生活をしていると、病気にかからなければ1日平均50塩基が短縮するんです。
病気をしなければ5,000割る50で100、病気をしなければ皆さん方は、病気の遺伝子と関係なく100歳まで生きられるんです。
ところが病気をするとテロメアはより多く減ります。
そして残りのテロメアが減っていますから、その残りのテロメアを上手に使わなくちゃいけないんですけれども、今、毎年50塩基短縮するのを40にすればいいんです。
それには、免疫を高めるものを食べることで、テロメアが短くなりません。
活性酸素を浴びると免疫が低下し、テロメアが短くなります。
だから活性酸素を抑える色のついた野菜、果物をとって、ストレスを避けて、そして、なるべく文明社会に接しないようなことをする。
食べ物は年をとってきたら精製した白米はやめて玄米に、そして全粒粉でつくったパンを食べる。
そういうことを実行していると125歳まで元気で生きられるわけです。
私はT-PECという医療総合会社の社外取締役をやっています。
その医療団のトップが日野原先生でした。
日野原先生は105歳まで元気で、現役の医師でした。
日野原先生は、若いとき結核で何度も入院していました。
日野原先生のテロメアは使われているはずです。
でも、残りのテロメアを上手に使うことで105歳まで元気で生きられた。
皆さん方もテロメアを減らさない生活をしてほしいと思います。
医療現場は大変なことになっています。
日本人の平均寿命は世界で突出しています。
しかし、日本の医療は、殺さない医療です。
息をしているだけでもいいから生かす。
点滴を受けながら生きているだけの人間だらけでは日本は潰れてしまいます。
少子化、高齢化が急速に進んでいます。
みんなお年寄りが点滴を受けている人ばかりでしたら、もう日本は潰れてしまいます。
ですから、少なくとも80歳以上まで元気で働らかなくてはいけない。
そのためには、私の本を読んでいただきたいと思います。
私たちの体を構成している細胞は1万年前と変わっていませんから1万年前と同じような生活を思い出して、現代の生活にも少し取り入れていただきたいと思います。
(図14)
きょうは貴重な時間をいただきました。 最後までご清聴いただきました。 ありがとうございました。 (拍手)