講演会(ご案内・ご報告)

第7回講演会

プログラム2
「がん患者の不安と期待」
NPO「丸山ワクチンとがんを考える会」理事長
東京大学名誉教授:篠原 一


1.はじめに:科学的思考をするうえで社会科学と自然科学に違いは無い

東京大学名誉教授:篠原 一  皆様に顔が見えたほうが、お疲れが少ないと思いますので、高い壇のほうへ移動させていただきます。また専門家のスライドを見ていると疲労が重なるのではないかと思いますので、私は普通の光のもとでお話をさせていただきます。
 最初にお断りしておかなければなりません。私は医者ではありません。新聞報道で篠原 一医師になっておりますが、私は東大法学部の政治学の教授をしていた者で、医者ではないのですが、但しがん患者で、手術をしてから転移を防ぐ為に、丸山ワクチンを打つことにした、ただの患者です。
医者ではないので医学の話は亀谷先生にお任せします。そういうわけで、うっかりすると間違ったことを言うかもしれないですが、その場合は亀谷さんに後で直していただくことにして素人らしく思い切った言い方をさせていただきたいと思います。
 きょうは先ほどいろいろお話がありましたけれども、ほとんど末期がんに関することでした。これまでの臨床実験は大部分末期がんに関するものですが、それでは余り暗くなってしまうので、他に使用方法はないかということも含めて、基本的、一般的なお話をさせていただきたいと思っています。
 その前にきょうの講演会の骨組みを申しますと、最初に亀谷先生のような専門の方、それから一番最後は、生の、今患者でおられる方、治りつつある方に出ていただきまして、真ん中の私は中途半端ですが、云わば在家仏教家みたいなお話をしたいと思います。僧侶、仏教の専門家ではないのですけれども、在家、つまり野にあって科学的な思考をする者の話しと思って下さい。
このように3段階になっています。専門家と在家仏教家というか在家科学者と、患者という3段階の構成になっています。
 それで、在家という立場は何かということですが、私、社会科学者ですから、科学的なものしか採用しません。信者とかそういうものでは全くなくて、科学的結果がわかったから私は丸山ワクチン認可の運動に参加したわけです。そういう面では、自然科学と社会科学の基本的な思考方法は同じです。
ただ、違うところは何かというと、私は患者ですから、どの薬が効こうが効くまいが生きればいいんです。
 専門家として、例えば丸山ワクチンを本当に証明しようとする場合は単独使用しかないでしょう。先ほど述べられたように化学療法との併用での比較ということもありますけれど、一番いいのは単独でやった場合どういう効果があったかどうかを調べることです。
 しかし私は必ずしもそれにこだわりません。効けばいいんだと思っています。ただしそれには根拠がなきゃだめです。
 そういう立場をとるということは、患者として当然と思われるのですが、学界というところには偏見というか対立が非常に多い。医局や大学の系統によって全然違うことを言うんですよ。最先端の世界でも、例えば大阪大学系の先生がやると、自分の系列のことだけ紹介する。しかし東京大学の医科研でやっていることは紹介しないとか、又その逆のことがあったりして、奇妙な事が多い。私はそんな派閥とか大学とかに関係ありませんので、どこでやっても、いいものはいいというふうに考えています。そこが在家のいいところです。どこにも属しておりませんので。
 以上が前置きですが、私は在家の科学者としてはがん治療をどう考えるかということをきょう申しますと同時に、どちらかというと末期のことは外しまして、いかに前向きに生きられるかという方法というか、戦術について、私の考えをお話ししたい。ただし、全部多少とも科学的な根拠があることです。
 さて、根拠があるという場合、錯覚しては困るのですけども、自然科学も社会科学もほとんどが仮説です。仮説というのはこういうふうに理論的に思われる、しかし、証明せよというと100%証明できるものではないということです。ことに生命科学などはそうです。対象は極めて複雑な存在ですから、完全に証明はできないんですが、しかし、その中で一部でもこういう結果があって、効果があるんじゃないかということが証明されればよい。それが全然ないものはだめというふうに考えています。
そういうつもりでお聞きいただかないと、先ほど亀谷さんが言っていることについても、あれはどこか統計が間違っているとか、がんの認定が間違っているとか、そもそも病気じゃなかったんだと、みんなそう言って片付けちゃうんですね。非常にこれは非科学的であると思います。とくにこの世界は生き死にの問題ですから、科学的に完全に証明出来ないものも多い。
丸山ワクチンの研究者がせっかくデータを出しても証明が十分でないと、厚生省が、その当時は却下しました。自分で指定した資料以外は載せてはいけない。他でいい結果があってもそれは採用しない。そして、効果無しとか言って切っちゃうわけですね。
 でも我々がいろいろ活動しましたので、これは大変だっていうことになって、有償治験ということで金を出して治験剤として使用するのならよいといって、もう30年間使われています。普通の薬と同じなんですが、ただし、お医者様の許可というか承認がなければ打てないというだけなんですね。
 こういう異常なことをしたというのは、やっぱり判断が間違っていたと思っているんじゃないでしょうか。私はそういうふうに思わざるを得ません。新しく治験することを要求されていないのです。はじめに3年ごとに出せということだったけれど、その規制は今はないようです。
認可と言うと語弊がありますが、治験剤として認められているわけですね。だから皆様が、お医者さんの了承を得て日本医大にもらいに行けば、だれでももらえるということになっている。非常に安いですからね。私たちが値段決めたんですから。製薬会社が決めたんじゃありませんので安いのです。9千円しかかかりません。サプリメントより安いのではありませんか。
 さて、きょうは3つのことを申し上げたいと思います。
 1つはどういう段階で使うほうがいいか。それから2番目は他の治療法とどう併用したらいいか。3番目は自然免疫の発見と丸山ワクチンとの関係です。
 私たちがこのNPOを立ち上げた最大の理由の一つは、最近新しい免疫革命というのが起こりまして、自然免疫が注目されるようになったからです。今までは獲得免疫だけでして、例えばインフルエンザ・ワクチンを打ちますね。みんなに免疫がないから今、ワクチンを打とうと言ってその争奪戦をしているわけですね。老人はなかなか打ってくれないらしく、子供から始めるようですが、それは結構だと思います。特に新しいウイルスに対して獲得免疫がないからそのワクチンによって抗体ををつくろうというわけです。
ところが、どうも免疫というのは獲得免疫だけじゃないらしい。自然免疫というのもあるらしいとわかったのが、1997年ごろからです。まだ10年しかたっていません。
 結論を言いますと、その自然免疫を活性化する物質が丸山ワクチンだけじゃありませんけれど、どうやらそれが中心らしいということがこのごろわかってきた。丸山ワクチンの成分である糖脂質が自然免疫を活性化するらしい。そこで、私たちはNPOを立ち上げて、広く知っていただいたほうがいいだろうと考えました。
 後でまた申しますが、恐らく自然免疫の研究者はノーベル賞の対象になっているらしい。
 昨日はテロメアとかいう、老人になるとだんだん短くなっていくものがあってそれがなくなると死んでしまうのですね。それを発見した方が今度ノーベル賞を今年取られたわけです。これももう30〜40年ぐらい前のことです。
 ノーベル賞というのは時間をかけて後になって出されますので、つまりその研究の確実性が増してから出されますので、しばらくすると自然免疫からもノーベル賞が出ると思っています。そのときに、やっぱり、ああ、丸山ワクチンがあったんじゃないかというふうに、気づくのではなく、もっと早めに認識しておいたほうがいいというので、そういう運動をすすめています。
 そこで、時間がありませんので、今の3つの点の説明に入ります。



2.私と丸山ワクチンとのかかわり

 私は1973年にがんになりまして、先ほどちょっとお話ししたように手術をして、放射線を打って、そして丸山ワクチンを打ち出したのが1975年です。それから35年打ち続けていることになります。
今は1週に2回打っていますが、実際の病気のときは1日置きか1週3日という形になっています。10年以上経った段階でだんだん減らしていって週1回にしていたのですが、丸山先生に指示されて週2回に変えました。
 ともかく、35年打っているのです。もちろん、副作用など全くありません。逆に元気が出ます。風邪もほとんどひきません。こういうプラスがあって、また病気に対して効果がある薬というのは余りないのではありませんか。効く薬には副作用のない薬はないとよくいわれますが、そんなことはありません。逆にまた副作用のない薬は効かないということもありません。そのかわり丸山ワクチンの場合、効き方はじわじわしたもので、もちろん特効薬というようなものではありません。
 自然免疫の作用を強めるものですから、局所療法ではなく、癌に対する基本的療法と考えた方がよいでしょう。
 私は75年に打ち始めて、1980年ごろから運動を始めました。権力によってつぶされてしまうと思ったからですが、厚生省に認可されなくて、この世から消えてしまうのではないかという危機感がありました。今までは自分のために打っていたんですが、これは社会的な何か活動をしなきゃいかんなあと思って始めたのです。しかし1981年に認可の段階にないという判定が出され今日に至っています。
 それまでに、私なりにいろんな結果を調べまして、先ほど亀谷先生から出ました服部先生とか中里先生とか、そのほかにもいろいろな石田名香雄先生など基礎医学の先生の結果を見て、あっ、これはいけると私は思ったのです。
 これは大丈夫だ、運動しても大丈夫だというふうに思って運動を始めたんですが、その当時は先ほどの亀谷先生のお話にあったように、ほとんど末期がんの人に対して、どのくらい延命率があるか、どのくらい生き延びるかという、そういう調査ばっかりでした。
 今でもそうで結果を早くだすにはその方法しかない。重いがん患者は早く死んでしまうので、その方法は確かに有効です。このようにがんに関しては延命率の検査は出しやすいという面があるので、そこで、大体第4ステージぐらいの、そういう人を対象にして臨床試験をせざるをえない。きょうの結果を見ても皆ほとんどそうですね。



3.がんの再発予防として丸山ワクチンを使うこと

 じゃあ、あなたは何で打ったのかって言われると思うんですが、私は再発・転移が怖かったのです。これが一番怖かった。
がんだと宣告されるより再発・転移と言われたほうが怖いんです。これはがん患者の一般の考え方です。そこで再発・転移を防ぎたいと思って、少し遅れたかなとは思ったんですけれども、打ち始めることにしました。
 それが一つの目的だったのですが、もう一つは、当時から、私は次にがんが新しく起こるときの予防というか、防止になるんじゃないかと思いました。
この2つのことがあったのです。だから、この2つの目的のために私は打ってきたのですし、将来他の人々のためにもそういう運動をし続けないといけない、薬がなくなっちゃう、打てなくなっちゃうと困るというふうに思ったわけです。
 丸山ワクチンについては末期のときに打つものだと思っている人が少なくありません。ワクチン施設に来る方で1回分しかとりにこられない人がかなりおられますが、それは末期になって打つからです。
 心あるお医者さんは別ですけれども、もう何も処置ができなくなったときに、ワクチンを打っていいよと言うんですよ。がんセンターの先生でも もはや駄目ということになると、丸山ワクチン打っていいよって許可が出ることがある。こういう状態で本当に良いのかなと考え続けています。
もちろん、そのとき打っても、延命効果があったり、痛みが緩和されたり、また生活の質を保つという点で、ワクチンの効用はたくさんあります。

 次にこれも大切なことですが、2番目は、非治癒切除の場合です。
これはもっと簡単にいえば、手術をした後でがんがまだ残っているという状態です。そうすると、その段階でワクチンを打ったらどうかという問題です。その上まだ目に見えてないものが残っているかもしれない。そのときに打ったらどうか。末期ばかりじゃなくてこういう考え方が出来ますよね。
 これに関する調査がありまして、3カ月以内に打つと延命率が高い。1年以内ならまだいい。それ以後になると、効かないわけじゃないけど延命率が低くなるという、こういう調査結果が出ています。
 そうすると手術とかあるいは放射線でもいいのですが、処置をした後にすぐに打つんです。この段階では、ほとんどの大きなものは消えてるけれど、まだがんは表層部に残っている。そのときに打つと、高い効果があるということは、統計的にも出ているわけで、これはワクチン使用の最も有効な方法のひとつだと思います。
 それから、さらに、これもちょっと専門的な話で、亀谷先生に反対されるかもしれないんですけど、例えばかなりがんの進行していた人に対して、さらに続けて化学療法とか手術とか放射線をするわけにいかないケースです。
この段階で組織検査すると、がん組織は消えてはいないが、弱っているようにみえる。
もしかすると復活するかもしれない。しかし、それを完全に殺すためには化学療法とか放射線を打ち続けなければならないでしょう。それはもう出来ない。
それ以上続けたら生きた人間が死んじゃうわけですから、最後まで続けることは出来ない。残っているがんが、果たして半殺しの状態なのか、本当に死んだのか分からないわけですよ。
 そのような、ほかの処置がとれなくなったときに、生体に害が無く、自然免疫を活性化する丸山ワクチンを打ち続けていれば、ワクチンはがんを毎日攻撃し続けるわけですから、半殺しのものが本当に死ぬっていう可能性はあると思うんですよ。そういう打ち方も非治癒切除以後の打ち方であると思いますね。



4.未病の段階で(予防として)丸山ワクチンを使うこと

 3番目に、病気になる寸前の状態ということを漢方では未病といいますが、この未病の段階で打つのはどうかということです。だから予防といってもいいでしょう。
 人間の体では、毎日毎日数千個の組織変化が起こってそれを免疫がつぶしているわけです。妙な言い方ですが、そのうちかろうじて生き残ったものが、がんになっているのです。
そういう風に思うほうがいいでしょう。
 九死に一生というか、九十九死に一生を得て、かろうじて生き残ったのが、がん組織です。
ですからこういう免疫の作用を助けてやればいいわけですよ。がんのできる確率を少なくすればいい。そういうような打ち方もあるんじゃないか。
 これは、でも証明が難しい。
私は当時から本に書いて、もう30何年前から言っていることですが、例えば高月町なら高月町というところで、50歳以上の人に全部打つんですよ。そうすると、普通だったらがんになって死ぬ人が例えば3割いたとしても、もしワクチンを打ったらば1割しか死ななかったということになれば一つの証明になります。
しかし、これ大変ですよ。時間もかかるし、金もかかる。私はだから、よくその当時から、人口の少ない瀬戸内海の島ではできないかなというふうに言っているんですが。
そういうふうな証明をしない限り出来ないけれど、考え方としては面白いんじゃないかと思っています。



5.緒方知三郎先生のがん予防論

 専門家にも同じような考え方の人がいます。緒方知三郎先生というのはもうとっくに亡くなられた、東大の病理学の教授で、のち老人学をやられた先生です。 この先生によると、組織のエセ老化がおき、がん化のはしりになるこの老化を救うのがパロチンという、唾液だというんですね。
パロチンは薬品として売られていますが、エセ老化が最初の入り口だから、まずパロチンをやって、少し進行しそうだったら丸山ワクチンを打てということを遺稿で言って、亡くなりました。1973年のことです。
先生がお亡くなりになって遺稿が出たんですね。まずパロチン、次に丸山ワクチンがいいということを言っておられるんですね。これは一種の予防論です。

これは私は専門家でないので良く分かりませんけれど、緒方先生はいろんなことを実験した結果言われているわけで、私みたいな素人とは違う、病理学の大先生が言っているわけです。
緒方洪庵の後裔の方です。こちらの雨森先生と同じ、代々のお医者さんの方なんですよね。
 この人は当時から、やっぱり丸山ワクチンは、ほかの3療法よりいいということを盛んに言っておられたんですが、今ではほとんど忘れられちゃっているのではないか。
 彼はがん化した後のことを言っているのではなく、がんになるまでのことで、そのときに丸山ワクチンがいいということを言ってお亡くなりになったのです。



6.未病の段階で丸山ワクチンを使う意味

 最近は、もっと科学的な証明はあるかと言われる可能性があるので、1つだけ例を出します。1997年に、坂本先生という東京医科歯科大学の難治研究所の先生が論文をお書きになりました。私は専門家じゃないから難しい言葉を使いませんが、素人言葉で言ってもお分かりになって頂けるはずです。
 要するに大腸がんを人工的につくる。健康な大腸にある物質を入れてがんにするわけですね。
そうすると、結論だけ言いますと、ある組織ががんになる。がんにはなっていないが、その前の状態のものもある。
まだ見た目からいうとがんじゃないけれども、それはマーカーによって酵素の測定が出来ます。例えば、前立腺がんになっているかどうかはマーカーによって測るわけですよ。その数値が増えたらがんだということになります。
 そういうマーカーみたいなものを、細かい専門的な話はやめますけども、それを測るんですね。すると、がんになってない組織からがんの場合と同じような数値が出るんです。
見たとこがんじゃない。
ところがそれに対して丸山ワクチンを打った場合は、この移動中のまだ見た目にはがんになってないけれども、マーカーが高くなっている、対象のマーカーの数字を減らすんだそうです。
がんを抑制するらしい。またがん化した組織についても、その促進を抑える効果がある、そういう調査結果を細かく出しておられるのです。
それだとすれば、これは明らかに未病のケースでしょう。その段階に効くわけです。
 このように、未病の段階で打ったほうがいいという証明が、いろんなところでされているわけです。
さっき言ったようにそんなことを100%証明しろっていったら大変ですけど。しかし、世の中で一部結果が出ているのだったら、それを否定するほうが非科学的だと思う。その結果を認めるほうが科学的だと思うんです。他者の研究結果を認めないがん学者よりも私のほうが科学的だと思っています。偏見がないから。
 そうすると、将来、やっぱり未病の段階までいかないと、延命率だけだとちょっとさびしいねと思うんですよ。今の2番目と3番目について、科学的根拠があるのですから、ワクチンの使用をしたいと思っているんですが、大部分のお医者さんはこの段階では打ってくれないんです。そこがネックなんです。だからこういう活動もしなきゃいかんかなというふうに考えています。私もテロメアが短くなっておりますので、そういう老人としては、後に何か少しでも残していかないといけないと思ってやっているのです。



7.有効ながん対策

 最近、週刊朝日に小倉千加子さんがエッセイを書いておられます。小倉千加子さんは社会学者なんですけれども、おもしろいことを書いています。ちょっと筆が滑ってなのか、阪神大震災のときに、地震の前に大阪府の港にカモメがいっぱい群れをなしたという例を出し、よく言うでしょう、大地震の前にカエルが騒ぎ出すとか。そういう現象があったんだけど、それには科学性が一部あるのではないかというようなことを書いて、どういうものかその後に丸山ワクチンについてふれられています。
 それはなぜかというと、今売れている本で、中井久夫先生という、神戸大学で精神医学の大先生、大家がおられ「臨床瑣談」というエッセイを書いておられます。去年の3月に小雑誌にお書きになって、それがすぐ本になったものです。去年の一番いい本だという、毎日新聞の書評が出た本です。
 これがなぜ売れたかというと、丸山ワクチンについてのエッセイが話題になったからです。中井先生みたいな人が丸山ワクチンやるの?、ということで。
先生は自分も今打っているし患者にも打っているというんですね。自分は手術をやった後、ホルモン療法を拒否して丸山ワクチンを打たれているようです。
 先生は、いわゆる代替療法という、食事療法とか漢方とか、そういうこともいいと言って全部やっておられるようです。いいことは何でもやるということです。この「臨床瑣談」の中の丸山ワクチンについて小倉千加子さんは触れたんですね。
 そうしたら読者からメールが来た。私は17年前に手術をし、17年間大丈夫だったんだけど、最近また再発した。しかし臓器を6割方は取って今も生きている。もし千加子さんみたいに丸山ワクチンということになったら、私は今もう死んでいただろう。手術しなかったら死んでいただろうという。
これも変な話で、丸山ワクチンを打つから手術を拒否するなんてことはないんですよ。人間っていうのは手術したくないから、丸山ワクチンにしようという人はいないわけじゃないでしょうけれど、しかし丸山ワクチンをやっている先生方は、手術してください、放射線打ちたいなら打てるまで打ってください。しかし同時に丸山ワクチンも打ってくださいという、そういう発想なんですよ。だからそういう発言は非常に迷惑で、誤解なんです。
それも私に言わせれば、さっき言ったように、術後すぐに打っていれば、恐らく17年目には再発しなかったんじゃないかというふうに私は思っていますけれどね。
 ともかくそういう誤解がたくさんあります。千加子さんは反論をやめて、中井さんの本読んでくださいというふうに回答してました。

 それはともかくいろんな処置を、その場その場で適当と思われる処置を併用しなければなりません。さきに述べた3つの局所療法は有効で日に日に進歩しています。
3つの療法というのは、さっき言いましたように、手術と放射線と化学療法ですね。これはできる限りやって、そして丸山ワクチンも打つ。できればその処置の前に打ちたいですね。病院に入っている間も打ち続けたいんですよ。
 それでも私は助からないかもしれません。私も35年たったからといってあした死ぬかもしれません。どこかでがんが生き延びて、増殖していくということはあり得るわけですから。そんなこと否定しませんが、ともかく有効な「合わせ技」でいく。がんはそういう方法で対処しなければ到底対抗出来ないくらい、したたかな相手なのです。
なお信じられないのでしたら、たとえば織田孝一郎さんの「がん難民の哀歓」という本をお読みください。
 この人は奥様がリンパ腺のがんになった。それで、さっき3つの療法と言ったんですけども、さらに免疫療法もやった。
免疫療法にも局所療法があるんですよ。つまり、皆さんの血を取って培養して元に戻す。これも一つの局所療法と思います。我々の丸山ワクチンは基本的に毎日毎日自然免疫を強化することで、この局所療法とは違ういわば基本的療法というべきものでしょう。この基本的なものを、ほかの局所療法と重ねてやるということがいいわけです。
こうして奥様は18年間、生を全うされた。

 ただしもう一つの方法は、よく言われている代替医療と重ねて一緒にやる。
だから漢方もやってもいいし、食事療法もやってもいいし、やる人はヨガやハリ灸をやるとか。これは日本だけじゃない。
アメリカなんかで、統合医療センターというのがあって、代替療法と西洋医学的方法の双方をやるところがあります。
 中井先生はさっき言った、漢方もやるっていっていますね。
 このように片一方に純粋の代替医療がある。他方に純粋の西洋医学、真ん中に、丸山ワクチンのように西洋医学的な方法で、基本的な免疫療法をやるものがある。
ともかく重ねていろいろなのをやるということは必要になってくることです。
 あと5分ぐらいで終わります。
あなたに、がんがまた再発したらどうするというふうに言われると思うので、私見をのべておきます。
いまペプチド療法というのがはやってきているんですね。がんの表面にペプチドというたんぱく質の分解したものが出てくるんですよ。それを認識して免疫が攻撃するんです。がんというものは自己の一部で異物としてなかなか認識できない。外から例えばインフルエンザ菌が入ってくると異物だと思って免疫が攻撃します。がんは自分の一部ですから、なかなか非自己として認識できない。
 そこでペプチドを外部から注入して、がんを認識しやすくする。
その一方で、丸山ワクチンによって自然免疫を活性化して攻撃力を強める。
恐らく日本で一番のノーベル賞の候補に近い審良先生も、あるシンポジウムでペプチド療法と丸山ワクチン等の免疫療法を重ねると効果があるのではないか、ということを言われています。私の空想じゃありません。そういうのをやりたいと思っています。
 ところが、ペプチド療法というのはまだ完全でないんですね。害があるかもしれない。そこでまだもうちょっと時間かせぎをしたいと考えています。
 最後に、時間がなくなって十分説明することが出来なくなってしまいましたが、すでに申しましたように、自然免疫の問題があります。簡単に一、二分で言いますと、我々の皮膚の1ミリ下に、たくさんの免疫体があるんですよ。今までの獲得免疫とは違うものです。
 実はこれは高橋秀実先生の受け売りなんですけども、要するに小腸は人体の中で最も面積の広いものでしょう。にもかかわらず小腸にがんはほとんどない。これはどうしてかというと、小腸の表層にいっぱい自然免疫が張りついているからです。従って、ここにはほとんどがんない。この自然免疫には、記憶力がないようです。獲得免疫というものは過去の経験を覚えているわけです。あいつ来たなと思ったら即座に攻撃するわけです。ところが、自然免疫はそうでないもんですから、活性化するために頻繁に打たなきゃならないんですね。そこで1日置きにワクチンを今打つということはしんどいことですけどね、その薬の性格というか、ある程度自然免疫の性格上しようのないことです。
 丸山先生は理論家じゃないのですけども、たぐいまれな臨床家なんですね。何十万もの臨床を重ねた結果から結論を出しているので、こういう臨床家の診断のほうがあてになるんですね。丸山先生の言っていたことは、みんな当たっているんですよ。皮下に打てとか、それから打つのは1日置きにしろというようなことを言っておられますね。みんな今考えると理論的に説明のつくものばかりです。
 このように自然免疫論というのが出てきましたが、時間がありませんので、私たちが出しているNPOのホームページに高橋秀実先生が第1回目と、最近やりました第6回にそのことが書かれています。
 一般の人にわかるように書かれていますので、その論文を読んでください。私たちは今3つのことを申し上げました。
 最初はワクチンをどういう段階で打ったらいいか。次にどういう打ち方をしたらよいか 最後に最近になって出てきた自然免疫革命とは何か。
 特に最後の事は注目すべきことで、丸山ワクチンは、自然免疫を活性化することが証明がされたわけです。その攻撃細胞は、獲得免疫のT細胞という攻撃細胞とは全然違うんだそうです。新しいものです。それががんに対して最も攻勢的で効果があるということは、高橋先生の研究で証明されておりますので、これだけはぜひお読み下さい。
 私の話はそれですが、決して科学的とは言いませんけど、非科学的ではありませんので、そういうつもりでお聞きいただければと思います。
 ちょっと時間がオーバーしましたけど、では以上で。今度は患者のお話です。以上です。(拍手)