講演会(ご案内・ご報告)

第3回講演会

プログラム4
『ご挨拶』
日本医科大学ワクチン療法研究施設所長:永積 惇


日本医科大学ワクチン療法研究施設所長:永積 惇  本日は亀谷先生、伊丹先生にはすばらしいご講演をして頂きありがとうございました。本日の両先生のお話には私も同感ですし先生方のお話に付け加えさせていただくことや、お答えする内容をお話して私のご挨拶に代えさせていただきます。
 私の専門は神経内科医であり約44年間、神経内科医特に脳血管障害や認知症を専門としておりましたが、大学を定年になりますときに現在の理事長よりワクチン療法研究施設へ移動する要請を受けました。しかし私は神経内科ですので現役時代は腫瘍の患者様に接する機会が殆んど無く、丸山ワクチンを使用した経験も殆んどありませんでした。このため私で勤まるのかを大学側にお話しましたが、最善を尽くしてくれれば良いとのお話でワクチン療法研究施設へ7年前に移動してまいりました。

 しかしワクチン療法研究施設に移動して驚きましたのは、癌の患者様でありまた特に余命数ヶ月と宣告された方々なのに、数多くの方々が長期間生存されているのには驚きました。また私の先輩である平井先生や後藤先生からもこれまでのワクチン療法研究施設の経緯や患者様のこと、学会発表などのことをお話していただいたりしましたが、例えば今の医学では1年以上の生存が難しいと言われております膵臓癌や肺の小細胞癌でも1年はおろか10〜30年間生存されている患者様の数を報告いたしましても、専門家の先生方は「そんなことは有りえない。それは最初に診断した医療機関の診断が誤っているのではないか」と言われますと私どもには反論できないのが現実です。また外来に来られる方々は皆様が「こんなに元気で生活できるのも丸山ワクチンのおかげです」とか「こんなに自覚症状が軽くなったのは丸山ワクチンのおかげです」と言っていただけるのですが、それが丸山ワクチンの効果であるかどうかを判定する術が無いのも事実です。そのために現在の医療機関の中で丸山ワクチンを認めていただけない医療機関があることを残念に思っています。私は医師として患者様が良くなられることが最も大切なことであり、その原因がどの治療法によるものかを判定する必要は無いと考えております。

 またこれまで丸山先生がご存命の頃は良かったのですが、それ以後現在でもワクチン療法研究施設では医師の確保が大変な時代が続いております。私が所長として勤務を始めて以来、今のワクチン療法研究施設のあり方では、新しい若い医師を確保することが難しいため、付属病院である必要は無いので日本医科大学内に癌センターのような部門を作りそこでは丸山ワクチンも使用する形をとってほしいと理事長にもお願いしてきました。今回これまでの付属病院長であった高野先生が理事になられ、高野理事より今度改築します新病院の目玉として「癌集中治療室」を作る予定でありそこにワクチン療法研究施設をまとめても良いのかと言うことが打診されましたため、私は積極的に取り組まれるようお願いしております。このことが解決されますと亀谷先生がお話された将来のためにも、多くの学会報告を行なってほしいと言われたことも解決するのではないかと思います。よく患者様やご家族より腫瘍マーカーと癌の関係についてご質問を受けますが、私がびっくりしましたのは一昨日来られた患者様の経過ですが、12年前に胆管癌と診断され、8年前CEA:70・CA19-9:230、そして6年前よりABからA単独隔日注射に変更され、4年前からA単独連日注射に変更されていますが、そのときのCEA:1200〜1300、一昨日見えましたときにはCEA:4800,CA19-9:5800でしたが、日常生活活動(ADL)は正常と全く不自由なく生活されておられるとのことです。医師にとっても癌が無くなれば最高ですが、無くせない場合にはその癌と折り合ってゆくのも大切な医療であると思います。また伊丹先生のお話に私も同調しますが、日本医大の私より先輩ですとご存知ですが、私が学生の頃生理学では有名であった戸塚教授の授業で先生は「お前たちが医師になると自分が患者さんを良くしたと思うであろう。しかし医師に出来ることは良くなる患者さんを少し早く良くするだけで、良くならない病気を良くすることは出来ない」と言われ非常にショックを感じました。しかし私が幸せであったのは、卒業2年目のある日二人の60歳代の女性の患者様を受け持ちました。一人は軽い肺炎ですぐに良くなると思っていましたが、もう一人は多発性転移性癌で癌性腹膜炎も併発されている患者様でした。ところが肺炎の患者様はご主人とも子供さんとも折り合いが悪く自殺したいと言っておられました。もう一人の方は2〜3ヶ月しか持たないと思っておりましたが、その患者様は9ヶ月後に一人娘が結婚するためなんとしてでも結婚を見届けなければ死んでも死に切れないと言続けておられました。肺炎の方は3ヶ月で亡くなられ、癌の患者様は9ヵ月後にお嬢さんが結婚され新婚旅行から帰り挨拶に来られた1週間後に亡くなられました。このときに戸塚教授の言われたことを身にしみて感じることが出来ました。それ以来私の医療にとっては「如何にしたら患者様に病気に立ち向かう気力を持たせることが出来るか」が最も大切なことになっています。私の専門分野では脳卒中や認知症の高齢のご夫妻を診察します。認知症には遺伝もあります。しかしご夫妻のどちらかが身体的な異常や、記憶障害がある場合にはその連れ合いは、年齢に比べ身体も脳もはるかに若いのです。それは自分が病気をしたら大変になると言う、気力によるものとしか説明できません。伊丹先生のお話にもありましたように、癌の患者様でも病気に立ち向かう気力旺盛な方は長生きされます。私はいつも外来でお話しますのは「人間の気力によって培われた、人間の治癒力に勝る医療は無い」と言うことです。気力のない方にはどんなに良い治療をしても助けることが出来ませんが、気力のある方ですと医師の予想以上に良くなる場合が多いのです。

 是非皆様にお願いしたいのは、ご家族や周りにこのような方がおられる場合には、その方々に病気に立ち向かう勇気を持たせるようにしていただきたいと存じます。

 少し長くなってしまいましたが私のご挨拶とさせていただきます。